さや管(鞘管)とは、架橋ポリエチレン管・ポリブデン管といった合成樹脂管(給水給湯管)を保護するための可とう性樹脂管のことです。
一言で言ってしまうとこれで終わってしまうので、少し長くなるかもしれませんが、この記事ではサヤ管についてもう少しだけ詳しく解説していくことにしましょう。
架橋ポリエチレン管・ポリブデン管って何?という方は、別記事を参照していただければと思います。
さや管とは?
さや管は可とう性のある樹脂製保護管です。
性質としては電気工事で使うCD管・PF管とほとんど同じです。
この名前の由来は、「さや」という言葉からもわかるように、傷つきやすい合成樹脂管を守るための「鞘」として生まれたことから、さや管という名前がついたようです。
CD管・PF管の応用として完成したのがさや管であり、後で解説しますがさや管ヘッダー工法において合成樹脂管(ポリエチレン管・ポリブデン管)を通管・交換(更新)しやすくするための保護管として開発されました。
給水・給湯管についてはこちらの記事で解説しましたが、合成樹脂管以外の給水給湯管(塩ビ管や鋼管、銅管など)は、それ単体で充分な強度と耐久性を備えていますが、合成樹脂管だけは柔らかく可とう性を持っているため、裸で露出配管をすると傷がついて水漏れの原因になってしまったり、劣化の原因となってしまいます。
か弱い合成樹脂管を守るために、さや管や被覆が登場したというわけですね。
色の種類は、ブルー(給水用)とピンク(給湯用)の2種類があります。
サイズ(呼び径)は16,18,22,25,28,30,36となっています。
架橋ポリエチレン管・ポリブデン管との適合サイズについては、次の表を参考にしてみてください。
さや管を取り扱っている代表的なメーカーは、積水化学工業や古河電気工業、未来工業などがあります。
やはり電材メーカートップの古河・未来がCD管の応用でさや管を扱っているようですが、現在ではセキスイが半分以上のシェアを誇っていると思います。(データがあるわけではなく主観です。あしからず。)
さや管ヘッダー工法とは?
さや管ヘッダー工法(サヤ管ヘッダーシステム)は、給水・給湯配管の工法の一種で、集合住宅または戸建て住宅などに適用されます。
先ほどの項目で説明したさや管を使用し、さや管の中の給水管・給湯管には架橋ポリエチレン管やポリブデン管を使用します。
また、個々の水栓器具への給水給湯の分配は、ヘッダー(分岐管)にて行います。
HIVPなどを使用した通常の給水・給湯配管においては、分岐するたびにチーズやエルボなどの継手を使用しますが、このさや管ヘッダー工法においてはその必要がなく、スタート地点にヘッダー継手を設置することで一気に管を目的地へと接続する、という感じですね。
このさや管ヘッダー工法のメリットとしては施工が簡単であることに加え、継手部材の使用数が少なくて済むこと、そして継手=接続部分の数が少ない分、漏水が起きうる箇所も少なくなります。
さらに、仮に合成樹脂管本体に傷がついた場合、ヘッダー部分から合成樹脂管を抜き出し、新しい合成樹脂管を、さや管を通じて交換することが可能です。
デメリットとしては、継手が少ない分、管(合成樹脂管&さや管)の使用量が増え、結果的に価格が高くなってしまう=コストがかかることでしょうか。
ただでさえ架橋ポリエチレン管やポリブデン管はVP管よりも値段が高いのに、それに加えてさや管を使用するとなると、施工者にとっても結構な負担になってしまうのです。
このさや管ヘッダー工法に関してはこのデメリットの要素が大きく、最近ではさや管ではなく被覆の合成樹脂管を用いる「(被覆)ヘッダー工法(ヘッダーシステム)」や、ヘッダーを使わず従来のVP管施工と同じ方法で合成樹脂管を使う「先分岐工法」が主流になりつつあります。
どの工法を用いるか、というのは施主・施工者や状況・環境・経済状況によって異なりますが、個人的な見解としては、県営住宅など公的な住宅においてはさや管ヘッダー工法が、民間の住宅設備においてはヘッダー工法や先分岐工法が採用されている確率が高いような気がします。
また、最近では継手と管の接続があらかじめ完了していて、現場でそれを設置するだけのプレハブ工法というものが拡がっているようです。
さや管ヘッダー工法以外の合成樹脂管の工法については、またいずれ別の記事でまとめてみようかなーと思っていますので、しばしお待ちください。
おわりに
今回は「さや管って何?」というお話から始めて、さや管を使った工法「さや管ヘッダー工法」について書いてみました。
VP管の施工などと比べると、そこまでメジャーな工法とは言えないかもしれませんが、やはり集合住宅・戸建て住宅においては需要のある工法の一つです。
わかりづらい点や間違っている点などありましたら、コメントにて指摘していただけると助かります。